仕事と賃金の世界統計
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月給だけでは見えない賃金の姿――給与所得者の「時間当たり報酬」をどう読むか

仕事と賃金について、世界の統計を定点観測する

トップ読みもの

給与所得者の賃金を比べるとき、月給や年収だけを見ても、仕事から得られる報酬の全体像はつかめない。同じような給与額でも、働いた時間が異なれば、時間当たりの報酬は変わるからだ。反対に、時間当たりの賃金が分かっても、その人がどれだけの時間働いたかは、労働時間を扱う別の統計でなければ確認できない。

そこで重要になるのが、給与所得者の割合、時間当たり賃金、労働時間を別々の統計として確認し、組み合わせて読む視点である。

給与所得者の割合は賃金水準を示さない

世界銀行が掲載する指標では、働く人のうち、賃金や給与を受け取る立場の人がどの程度を占めるかを確認できる。全体に加え、男性と女性を分けた指標も用意されている。

ただし、この指標が表すのは雇用上の立場であり、給与額の高さではない。給与所得者の割合が大きいからといって、高賃金の仕事が広く行き渡っているとは限らない。自営業者や家族従業者など、給与所得者以外の働き方がどの程度含まれるかによっても割合は変わる。

男女別の差についても、直ちに待遇差と解釈することはできない。雇用されて働く人の比重が異なることは分かるが、賃金格差を判断するには、賃金額、労働時間、産業、職種などの別の情報が必要になる。

時間当たり賃金が補うもの

Statistics Canadaの資料は、給与所得者の時間当たり賃金を産業別に確認するための統計で、残業に伴う報酬も対象に含めている。月給だけでは隠れやすい「働いた時間に対して、どの程度の報酬を受け取ったか」を考える手掛かりになる。

もっとも、時間当たり賃金も万能ではない。残業を含むか、賞与や各種手当をどのように扱うか、支払われた時間と実際に働いた時間のどちらを使うかによって、指標の意味は変わる。産業別の平均は、その産業で働く個人全員が同じ賃金を受け取っていることも意味しない。

労働時間統計と組み合わせる

Statistics Denmarkの労働時間勘定には、四半期を対象とするもの、年間を対象とするもの、季節変動を調整したものなど、目的の異なる表がある。短期的な変化を見るなら四半期の表が役立ち、より長い期間の構造を見るなら年間の表が適している。季節調整済みの系列は、休暇や繁忙期など、毎年繰り返される動きの影響を抑えて変化を見たい場合に向く。

一方、未調整の系列には実際の季節的な動きも含まれる。どちらかが常に優れているのではなく、知りたい内容に応じた選択が必要だ。季節調整済みと未調整、四半期と年間を混ぜて比較すると、変化の理由を取り違えやすい。

農業の労働投入を扱う資料も、働き手の人数だけでは捉えにくい仕事量を考えるうえで参考になる。季節性が強い分野では、在職者数と投入された労働の量が同じ動きをするとは限らないためである。

指標ごとの役割を整理する

確認する統計分かることその統計だけでは分からないこと
給与所得者の割合雇用されて報酬を受け取る働き方の広がり給与の高さや生活水準
男女別の給与所得者割合雇用上の立場にみられる男女の違い同じ仕事での賃金差
産業別の時間当たり賃金労働時間に対する報酬の産業差個人ごとの分布や年間所得
労働時間勘定働かれた時間や労働投入の動き報酬の配分や雇用の安定性
季節調整済みの系列季節要因をならした基調実際の繁忙期や閑散期の大きさ

比較前にそろえたい条件

国や産業を比較する前には、給与所得者の定義、対象となる雇用形態、賃金に含まれる報酬、労働時間の測り方を確認したい。平均値の作り方や産業分類が異なれば、同じ「時間当たり賃金」という名称でも中身は一致しない。

また、世界銀行の指標はILOのモデル推計に基づくため、各国の公表統計をそのまま並べたものとは性格が異なる。共通した枠組みで比較しやすい一方、国内統計の細かな区分まで示すものではない。国際比較には共通指標を使い、その背景を調べるときは各国の労働時間や産業別賃金の統計を見る、という使い分けが有効だ。

給与所得者の割合は「誰が雇用されて働いているか」、時間当たり賃金は「労働時間に対してどう報酬が支払われるか」、労働時間勘定は「どれだけの労働が投入されたか」を映す。月給という一つの金額に結論を集約せず、これらを重ねて読むことで、仕事と賃金の関係をより立体的に捉えられる。

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