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実質賃金ランキング 伸びない国の共通点――順位より先に見るべき「比較の土台」

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実質賃金は「給料の額」だけでは決まらない

実質賃金ランキングを見るとき、まず確認したいのは、賃金がいくら増えたかではなく、その賃金でどれだけのモノやサービスを買えるのかという点です。名目の給与が上がっていても、物価の上昇がそれを上回れば、実際の購買力は低下します。反対に、名目賃金の伸びが大きくなくても、物価が安定していれば実質的な生活余力が保たれる場合があります。

つまり、実質賃金が伸びない国には、単純に「企業が賃金を上げない」という一つの理由だけでなく、賃金の伸びと物価の動きがかみ合っていないという共通した問題が表れます。ランキングの順位だけを比べると、この関係を見落としやすくなります。

まず「何を測った指数か」をそろえる

厚生労働省の毎月勤労統計調査には、実質賃金について複数の表があります。現金給与総額を対象にしたもの、きまって支給する給与を対象にしたもの、さらに5人以上の事業所を対象にしたものと、30人以上の事業所を対象にしたものがあります。

同じ「実質賃金」という言葉でも、集計対象が異なれば数字の意味は変わります。比較する際には、対象となる事業所の範囲、給与の定義、年平均か年度平均か、季節調整の有無などを確認しなければなりません。

集計の区分実質賃金指数時期・基準
5人以上・調査産業計100.02009~2010年年次統計、平成17年平均=100
5人以上・調査産業計99.92009~2010年年次統計、平成17年平均=100
30人以上・調査産業計100.02009~2010年年次統計、平成17年平均=100
30人以上・調査産業計100.72009~2010年年次統計、平成17年平均=100

この表から分かるのは、同じ国の統計でも、対象範囲によって指数が異なることです。5人以上の事業所を対象にした指数と、30人以上の事業所を対象にした指数は、そのまま横並びにできません。国際ランキングでも同じで、集計対象が違う指標を順位だけで比べると、国の違いではなく統計設計の違いを見てしまう可能性があります。

伸びない国に共通する「三つのずれ」

実質賃金が伸びにくい国を考えるとき、重要なのは三つのずれです。

一つ目は、賃金のずれです。企業の売上や生産性が伸びても、それが労働者の給与に十分反映されなければ、実質賃金は上がりにくくなります。特定の業種や大企業だけで賃金が上昇しても、働く人全体に広がらなければ、平均値の改善は限定的です。

二つ目は、物価とのずれです。賃金改定の頻度が物価の変化に追いつかなければ、名目賃金が増えていても実質賃金は弱くなります。ここでは給与の伸び率だけでなく、生活に必要な支出がどのように変化したかを見る必要があります。

三つ目は、統計のずれです。現金給与総額と、きまって支給する給与では含まれる要素が異なります。年平均と年度平均も同じ期間を示すとは限りません。ランキングを読む側がこの違いを見落とすと、「伸びない国」という評価そのものが、比較方法に左右されます。

日本の読者がランキングから読むべきこと

日本の統計を見る場合も、指数の水準だけでなく、どの集計区分を使ったのかを確認することが大切です。2009~2010年年次統計では、平成17年平均を100とする実質賃金指数が、5人以上の調査産業計で99.9と100.0、30人以上の調査産業計で100.0と100.7として示されています。

ここから国全体の長期的な暮らし向きを断定することはできません。しかし、数字を読むうえで、対象となる事業所の規模や給与の定義が結果を左右することは確認できます。国際ランキングを読む際も、順位の上下だけでなく、同じ基準で比べられているか、名目賃金と物価がどのように組み合わされているかを見るべきです。

実質賃金が伸びない国の共通点は、単なる低賃金ではありません。賃金の上昇が広がらないこと、物価との調整が遅れること、そして比較する統計の基準がそろっていないことです。ランキングは入口にすぎず、その背後にある「誰の賃金を、どの期間、どの物価で測ったのか」を確認して初めて、国ごとの違いを意味のある形で読み解けます。

出典

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003138300

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003030713

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003030252

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003030253

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003029065

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003029066